偽婚
ちっとも弁護士には見えない風貌だが、しかし私が思っているよりもずっと、ちゃんとしているらしかった。

神藤さんといい、高峰さんといい、すごい人のまわりにはすごい人が集まるのだろうなと思う。


用は終わったらしく、煙草を咥えた高峰さんは、キッチンの鍋を覗く。



「うまそうだな」

「高峰さんも食べる?」

「そうしたいところだけど、さっき済ませてきたから」

「そっか」


高峰さんは、私を一瞥した。



「神藤とは、うまくやってるか?」

「まぁ、一応」


そこでふと思った。

高峰さんなら、もしかして『美嘉』のことを何か知っているかもしれない、と。


でも、探るような真似をしていいものなのか。



悶々と考えていた時、ガチャリと玄関のドアが開いた。



「ただいま。って、誰かきてるのか?」

「おかえり」


私ではなく高峰さんが、神藤さんを出迎える。

神藤さんは、急に不機嫌な顔になった。
< 79 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop