偽婚
言い捨てて、神藤さんはまた自室に消えた。
蛇口の水を止めることも忘れて、私は力が抜けたみたいに、床にへたり込む。
うなじ、舐められた。
吐息がまだそこにかかっているみたいだ。
水音よりも、鼓動がうるさい。
火傷した指より、うなじの方がずっと熱い。
「あぁ、やばいな……」
梨乃が余計なことを言うから、変に意識してしまうじゃないか。
好きになったって、どうせ不毛なだけなのに。
てか、神藤さんだって意味がわからないよ。
ヤリたいだけなら、とっくに押し倒されてるだろうし。
なのに、手は出さないくせに、嫉妬したカレシみたいなことを言う。
ひとつ屋根の下で暮らしてるのに、こんなことされたら、私どんな顔してればいいの。
「もう! バカ!」
叫んだ声が、虚しく響く。
自分の内側から溢れそうな気持ちを押し殺すことに、私は必死だった。
蛇口の水を止めることも忘れて、私は力が抜けたみたいに、床にへたり込む。
うなじ、舐められた。
吐息がまだそこにかかっているみたいだ。
水音よりも、鼓動がうるさい。
火傷した指より、うなじの方がずっと熱い。
「あぁ、やばいな……」
梨乃が余計なことを言うから、変に意識してしまうじゃないか。
好きになったって、どうせ不毛なだけなのに。
てか、神藤さんだって意味がわからないよ。
ヤリたいだけなら、とっくに押し倒されてるだろうし。
なのに、手は出さないくせに、嫉妬したカレシみたいなことを言う。
ひとつ屋根の下で暮らしてるのに、こんなことされたら、私どんな顔してればいいの。
「もう! バカ!」
叫んだ声が、虚しく響く。
自分の内側から溢れそうな気持ちを押し殺すことに、私は必死だった。