ドレスと一緒に私も売れました【優秀作品】
アクセサリーをつけ終えると、本当に華やかになった。

ほぼ初対面の人に、こんなにしてもらっていいもの?


「あの、専務さん、
こんなにしていただいても… 」

恐縮して私が口を開くと、専務さんは途端に表情を曇らせた。

「尋輝(ひろき)。
俺のことは、尋輝って呼んでくれ。」

あ、そうか。
恋人って設定なのに、専務はないよね。

「ごめんなさい、尋輝さん。」

私が素直に謝ると、尋輝さんは手を口元に当てて、照れたように目を逸らす。

耳もほんのり赤いような…

ふふっ
何これ!?
かわいい。


それでも、尋輝さんは、一瞬で我を取り戻し、

「じゃ、行こう。」

と私の手を取った。


私は、また手を引かれて、車に戻り、パーティ会場となるホテルへと連れていかれた。

友達の結婚式でもない限り踏み入れることのない空間に、気後れしながらも尋輝さんについていく。

尋輝さんはエレベーターに乗ると、手を離して肘を差し出した。

「ここからは、こっち。」

意味が分からず、首を傾げると、尋輝さんは私の右手を自分の肘に添えた。

そうか。
こういう場では、手を繋ぐんじゃなくて、こうするのか。

私は照れながらも、尋輝さんの隣に寄り添って立つ。

エレベーターが目的の階に到着し、私たちは会場に足を踏み入れた。

そこには、同じようにスーツを着こなした男性や華やかなドレスを身に纏った女性がいたが、決して皆が男女ペアのカップルではなさそうだった。

あれ? どういうこと?
同伴者が必要だから私を誘ったんじゃなかったの?
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