ドレスと一緒に私も売れました【優秀作品】
2着のドレスをショーウィンドウに並べて10日。
これまで、店の前で立ち止まる人はいても、購入どころか、試着を希望する人すらいない。
やっぱり、私には無理なのかな…
子供の頃、父が裁ちばさみでシャキ…シャキ…と布を裁つ音が好きだった。
ダダダっと大きな音を立てる業務用ミシンの音が好きだった。
真剣な眼差しで待ち針を打つ父の背中が好きだった。
5歳の時、事故で母を亡くして以来、父と2人で生きてきた。
できれば父の夢と思いの詰まったこの場所を守ってあげたかったけど…
あの時、父が倒れた時、もう少し気づくのが早かったら、今頃、私は独りぼっちじゃなかったかもしれない。
けれど、現実はそうはならなかった。
仕方ない。それも運命。
お昼過ぎ、そんな事を思いながら、店でデザイン画を描いていた時、カランカランと来客を告げるドアベルが鳴った。
私は、落ち着いた乾いた音で鳴るこのドアベルが好きで、未だに店を改装できずにいる。
今時の自動ドアと電子音のチャイムに変えたくはなくて…
これまで、店の前で立ち止まる人はいても、購入どころか、試着を希望する人すらいない。
やっぱり、私には無理なのかな…
子供の頃、父が裁ちばさみでシャキ…シャキ…と布を裁つ音が好きだった。
ダダダっと大きな音を立てる業務用ミシンの音が好きだった。
真剣な眼差しで待ち針を打つ父の背中が好きだった。
5歳の時、事故で母を亡くして以来、父と2人で生きてきた。
できれば父の夢と思いの詰まったこの場所を守ってあげたかったけど…
あの時、父が倒れた時、もう少し気づくのが早かったら、今頃、私は独りぼっちじゃなかったかもしれない。
けれど、現実はそうはならなかった。
仕方ない。それも運命。
お昼過ぎ、そんな事を思いながら、店でデザイン画を描いていた時、カランカランと来客を告げるドアベルが鳴った。
私は、落ち着いた乾いた音で鳴るこのドアベルが好きで、未だに店を改装できずにいる。
今時の自動ドアと電子音のチャイムに変えたくはなくて…