ドレスと一緒に私も売れました【優秀作品】
「いえ、こんなにいただくわけには
参りません。」

私が、お金を返そうとすると、

「いえ、あなたにはそれだけの価値が
あります。
遠慮なく受け取ってください。」

と微笑まれた。

…って、もしかして?

「あ、いかがわしい事を考えてるわけでは
ありませんから、安心してください。」

私の考えを読んだかのように男性は補足する。

「実は、今日、ちょっとしたパーティが
ありまして…
女性を同伴しなければいけなくなったん
です。
ご迷惑だとは思いますが、あのドレスを着て
一緒に出席していただきたいのです。」

ああ! …って、なるわけない。

パーティに同伴って、つまり奥さんや恋人のようなふりをしろってことでしょ?

こんなイケメンの横に私なんかが並んだら、不釣り合いでブーイング出まくりでしょ。

「大変ありがたいお申し出ではありますが、
私には荷が重すぎます。
どなたか別の方をお探しになっては… ?」

やんわりとお断りすると、

「相手が私では、役不足ですか?」

と真っ直ぐに見つめられる。

「いえ! とんでもない。
お客様のような素敵な男性のお相手
でしたら、私なんかより適任な方が
いらっしゃると思います。」

それこそ、その辺でナンパしたってすぐに見つかるでしょ。

「いえ、あなたがいいんです。
裁紬(たち つむぎ)さん。」

「え…? なんで私の名前… 」

私、まだ名乗ってないよね?
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