ドレスと一緒に私も売れました【優秀作品】
「やはり覚えていらっしゃらないんですね。
私たちは初対面ではありませんよ。」

え!?
そんな事言われても覚えがない。
こんなイケメン、出会ってたら忘れるわけないのに。

「え…と、あの、どこで… ?」

私がおずおずと尋ねると、男性は楽しげに笑った。

「じゃあ、それは今日の宿題に
しましょうか。」

「え?」

「パーティが終わるまでに思い出せれば、
あなたの勝ち。
思い出せなければ、私の勝ち。
負けた方は勝った方の言うことをなんでも
ひとつ聞く。
どうです?」

そんなこと…

「異存はありませんね?」

「え、あ、でも… 」

困った私が口を挟むと、

「ご希望なら、例えばそこの商業施設の
一等地にあなたのお店を家賃無料でオープン
させる…とかでもいいですよ。」

と楽しそうに微笑む。

「あそこの一等地って、家賃ご存知ですか?
簡単に払える額じゃありませんよ。」

あそこは月に何千万円も売り上げる店だからやっていける高額な賃料が請求されるという噂だ。

「大丈夫ですよ。私なら払えます。
どうですか? この勝負、乗りますか?」

お金持ちの道楽か。
でも、同じ感覚で金銭を要求されても、私には払えない。

「私、お金ありませんから… 」

やんわりと断るが、

「それは失礼ながら存じてます。
ですから、あなたには、金銭的な要求は
しない事にします。
それなら、大丈夫ですよね?」

と畳み掛けられる。

推しに弱い私は、つい、

「はあ… 」

と承諾してしまった。
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