狂った音
「……とはいえ、そろそろやかましいな」

黙り込んだ僕を横目で見ながら彼は本を閉じた。

どうせこの騒音のせいで僕が不機嫌になった。
………そんな風に思って気をつかったんだろう。

(全っ然違うよ、バーカ!)

でもやっぱりそんなこと言わない。
そういう頭いいくせに不器用でバカな所、好きだし。

「隣の家でしょ?」

確か隣に少し古めかしい家が建っていた。
確か庭に赤い小さな自転車があったから、女の子でも居るんだろう。

(するとこのピアノはその……)

間違えたりつっかえたり、そういうのもあるけど。
あと音が歪んでいる。
調律も悪いんだろうか。

あとそもそも何を弾いているのかよく分からない。
クラシックとか全然分かんないからかな。

「なんの曲なんだろう……」
「知らん」
「え。意外」

クラシックとかすごく詳しそうだけどな。

「お前なぁ、俺をなんだと思ってんだよ」

苦笑いして手を伸ばして、頭に触れる。

(あーはいはい。嬉しいけど、なんかなぁ)

刺激が足りないっていうの?
僕が焦りすぎなのか……あー、また思考が。

「あとそれ、隣の家じゃないらしい」
「………ほぇ?」

ネガティブな思考最中にぶち込まれた発言。
僕は、一瞬意味が分からず間抜けな声が出た。

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