狂った音
「……コホン。それって、どういうこと?」

咳払いで誤魔化しつつ聞き直す。
彼は特に何も感じた様子もなく平然と言ってのけた。

「ここに住み始めてすぐにピアノの音が気になって、隣の家を調べたんだ。すると半年ほど前にこの家は、誰も住んでいない空き家になっていたらしい」

……相変わらず、興味を持つと行動が早いな。
この男は。

「するとなにか。この騒音は隣の家からの音じゃないって?」
「そうなるな」

確かに窓を閉めても。
いや、むしろ音は少し大きく聞こえていた。

「ま、まさか……」

僕の嫌な予感に太郎は大きく頷いた。
……しかも、何故かすごく嬉しそうに。

「そうだ。ここが、この家こそが音の発信源だ!」
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