暴走族の総長様は、私を溺愛してるらしい。
ふと前を向くと、切羽詰まったような男子がそこにいた。

「…あの!お話があるんですが!」
「はい、何でしょう?栗野くん」
「な、名前っ!覚えててくれたんですか?!」
「え?まあ…一応同学年ですし」
「あの、先輩が西園寺さんのこと呼んでるんです。この後、校舎裏にきていただけませんか?」

今は、昼休み。
特に用事もないから、まあいいでしょうか。

「わかりました。行きましょう」
「ありがとうございます!」

ぱあっと明るくなった栗野くんの顔を見て、何だかいいことをした気分です。

「では、先生。急用が出来たので、私はここで」
「…忙しいって言ってたじゃん」
「言ってませんよ?そんなこと。私は今から忙しくなるのです」
「はいはい。じゃ、また後でなー」
「さようなら」

永遠に会いませんように。
そう祈りながら、踵を返す。

先生がじっとこっちを見ているのも気付かないでーー……
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