暴走族の総長様は、私を溺愛してるらしい。
あ、でもそんなことはわかってますか。
それなのに私を人形に例えるということは。

「日本のお人形さん…いや、お人形さんと言ってもこけしのような…暗いと言いたいんですね」
「へ?」
「だからサナコさん役に選ばれたんでしょうか?まあ、当たってますが」
「ちょ、ちょちょ菜乃さん!?誤解してません?皆さんは菜乃さんがサナコさんのように美しいから選んだのですよ?」

別に慰めてくれなくてもいいのに。
当たってることなんですから。

「チラシでも張ってきますね」
「な、菜乃さん!!ぜひ私も一緒に回らせてくださいな!菜乃さんの魅力についてまだまだ話し足りないのですよ!!」

それから。
1時間くらい、私じゃない私の話をしていたのでした。
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