暴走族の総長様は、私を溺愛してるらしい。
「そうか。文化祭の仕事サボるなよ」
「はい」

…この微笑みに赤くならないのか、婚約者様は。
私でしたら、顔を赤くして一目散に逃げ出しましたのに。

婚約者様、おそるべしです。

「いいところで邪魔された」
「あ、はは…」

ぷくーっと膨れる煌輝くん。
…可愛い!

「まあ、バレなかったんだから、よかったじゃないですか」
「菜乃。俺は菜乃のこと好きだよ」
「ありがとうございます」
「お世辞じゃないからね?」
「はい、わかってますよ」
「じゃあ、菜乃は俺のこと好き?」
「好きですよ、友人として尊敬しています」
「そっちの好きじゃないんだけどな…」

私だって、あれだけ好き好き言われれば気付きます。
そういう意味で、好きだってことくらい…

でも、言いません。
言えないんです。
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