暴走族の総長様は、私を溺愛してるらしい。
菜乃の『カッコいい』という言葉に思わず浮かれてしまう俺。
自分でも思うよ。
俺って単純だよね。

「菜乃。今日も一緒に帰ろうね」
「あ、今日は少し用事ができてしまって。先に帰っててください」
「いや、待ってるよ。それでなんの用なの?」

告白とかだったら相手の男の顔面がえぐれるよ?

「わからないんですが、校舎裏に呼び出されてまして」
「ふーん…」
「すぐ済むと思います。待たせてしまってすみません」
「いいよ、大丈夫。気にしないで」

俺も用ができたから。
男の顔面を抉るっていう、重大な用がね。

その時はまだ知らなかった。
これから起こることを、俺は知らなかったんだ。

まさか、あんなことになるなんてーー……
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