暴走族の総長様は、私を溺愛してるらしい。
すごい騒音だろうけど、不思議と怖くない。
ちらっと後ろを見ると、西園寺家の人たちが追ってきていた。
私がいるから下手な手出しはできないんでしょう。
ザマアミロって思います。

「…えっと、あの、運転手さん」
「伊井野(いいの)です」
「伊井野さんはなぜ暴走族の車の運転手を?」
「……」

沈黙。
答えたくないってことですか。
ま、構いませんけど。

ぼーっと外を眺めていると、車が止まり、周りのバイクも止まっていた。

「……」

無言でドアを開けてくれる伊井野さん。

「ありがとうございます…」
「……いえ」

沈黙の末帰ってきたのはそんな言葉。
まあ、話してくれるだけマシですかね。
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