加納欄の受難 シリーズ1 シーズン1
 大山先輩が兄さんの頭をパンと張り倒す。

 それに切れた兄さんが、大山先輩の顔めがけてパンチを繰り出した。

 当たる寸前に大山先輩は足は動かず体だけ後ろへ倒れパンチをよける。

 勢いよくパンチをくりだしたため空振りに終わった兄さんに大山先輩は、エルボーと膝キックをいっぺんに決めた。

「野郎~!!」

 若い兄さんがやられたことに周りの野郎達があたし達を囲んだ。

「阿藤はどこにいるんだ」

 大山先輩がもう一度、冷静な声で話した。

「うるせぇ!」

 いっせいに大乱闘になった。

 全て大山先輩に向かうかと思ったが、あたしの方にも何人か来た。



チッ(-.-)



楽できるかと思ったのに。



 あたしは、パンチをよけキックをかわし相手の間合いに入って全ての急所に当て身を入れた。

 相手は呼吸が出来なくなりその場に倒れる。

 もちろん殺してなんかない。

 護身術のひとつである。

 大山先輩が毎回暴力団相手に平気であたしを連れてくる理由は、戦闘員の1人になるという確信もあるからだと思う。

 あたしは、そのまま3人を床にねじ伏せた。

 ところに3人の男性が現れた。

「何してやがんだ!」

 入って来た3人のうちの1人が怒鳴った。

 そして、大山先輩の姿をとらえると。

「やめねぇか!馬鹿野郎っ!しょぴかれてぇのか」

 と、自分の部下を止めに入った。

 大山先輩はその相手を確認すると、殴っていた手を止めた。

「よぉ田崎ぃ。最近の若いのは勢いばかりで教育がなってないんじゃねぇのか?」

 襟を正しながら話した。

「大山さん。勘弁して下さいよ。うちは元気だけが取り柄の会社なだけですから。ところで今日はお嬢さんも連れて何かあったんですか?」

 お嬢さんとはあたしのことだ。

「たまに顔が見たくなるんだよ。ゴキブリ駆除したくなってな」

「健全な庶民に随分な言い方ですね」

「何が庶民だよ。阿藤はどこだよ」

 田崎はため息をひとつつくと。

「社長はお客様と商談中ですよ」

 と、言った。

「ゴキブリの客なんてムカデくらいなもんだろ?」

 そういうと大山先輩は、奥の部屋へ入って行こうとした。


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