Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
気がつけば、繋がれていたはずの手は、いつの間にか離れ、周囲の人影もまばらになっていた。


「小笠原さん、どうされたんですか?・・・。」


さっきまでの明るいというか、朗らかな雰囲気が一変していて、私は思わず聞いてしまう。


「石原・・・今日も一緒にいてくれて、ありがとう。」


「はい・・・。」


「俺は、お前の笑顔を、毎週こんなに間近に見られて、幸せだ。この時間がもっと続いて欲しいといつも思ってる。お前ともっと一緒にいたいという思いが募るばかりなんだ。」


小笠原さんの真剣な表情が、胸に迫る。


「だけど・・・お前はどうなんだ?お前は俺と一緒に居て楽しいと思ってくれてるのか?いや、楽しんでくれてるのは、なんとなく伝わっては来る。少なくても、俺に誘われて、俺と居ることを嫌がられてはいないんだろうな、とは思う。このキレイな景色を一緒に見て、よかったなと頷き合って、また来週のデートに誘えば、お前はきっと応えてくれるんだろう。」


「・・・。」


「そうやって少しずつ、距離が縮まっていけば・・・俺はそう思っていた、いや今でも思ってる。だが・・・お前はそう思ってくれてるのか?俺はお前が好きだ、付き合って欲しいと言った。そしてこうして毎週デートして来た。だけど、お前の気持ちが伝わって来ないんだ。俺とこれからどうして行きたいのか、俺の告白に対するお前の答えを今、求めるのは、まだ早過ぎるか?」


そうだよね、私、まだちゃんと返事してない。それってズルいよね。3回目のデートは1つの節目、美里にもそう言われてたのに・・・。


小笠原さんのこと、私嫌いじゃない。ううん、好きだよ。だから毎週デートしてるし、それを楽しみにしてる。


その気持ちをキチンと伝えなきゃ・・・そしてちゃんとカレカノになって、お付き合いを続いていかなきゃ・・・。


そう思ってるはずなのに、なぜか私は俯いてしまっていた。私もあなたが好きです・・・その言葉が出て来なかった。
< 128 / 225 >

この作品をシェア

pagetop