Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
課長は俺を人気のない廊下に連れて行くと、向き合うように俺を見た。


「仕事の話じゃないから。」


「そうでしょうね。」


仕事の話なら、わざわざこんな所まで、連れて来る必要ないだろうからな。


「石原・・・いや、梓と付き合ってる。」


「みたいですね。」


「梓が好きなんだ、誰にも渡したくない。」


「・・・。」


なんで、こんな所に俺を呼び出して、こんなことを俺に言うんだ?訳がわからず、俺は戸惑ったまま課長の顔を見る。


「だが正直に言えば、梓はまだ完全に俺に振り向いてはくれてない。彼女の心の中に・・・お前がいるからだ。」


その課長の言葉に、俺は驚く。


「だが、俺は絶対に負けん。必ず彼女の心からお前を追い出し、梓をこの手に収めて見せる。」


「そんな力まないでも大丈夫ですよ。俺と課長、どっちが石原に相応しいかと聞かれれば、
100人が100人、答えは一緒だと思うし。それに知らないかもしれませんが、俺は以前、石原にコクられて、はっきり断ってます。石原が今更、俺を思ってるって言うのも、課長の思い過ごしだと思いますよ。」


「俺もそう思ってた、だけど違った。」


「えっ?」


「梓の気持ちが、お前にまだあるのも誤算だったが、それ以上に誤算だったのは、お前が本当はやっぱり梓が好きだったってことだ。」


そう決めつけられて、俺は凝然と課長の顔を見つめた。
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