Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
昼休憩が終わって、部屋に戻ると


「お帰り。」


と千尋が声を掛けて来る。


「うん、ありがとう。」


私は笑顔を返すけど、千尋はフッと視線を逸らす。このところ、なんか千尋の様子がおかしいような気がする。


元気がないし、なんか私に対する態度がよそよそしいような・・・。


気にはなってるんだけど、なかなか話すタイミングもなくて。今日は仕事が終わったら、ちょっと話してみようかな。


そう思って3時の休憩の時に、声を掛けてみるけど


「ゴメン、今日は約束があって。」


とのこと。それは仕方ないけど、その時もなぜか私の顔を見ない。千尋とはもうかれこれ3年近い付き合いだけど、こんな雰囲気は初めて。


「千尋、何かあったの?」


たまりかねて聞いてみるけど


「ううん、なんでもないよ。今夜は本当にゴメンね。」


と言うと、席を立ってしまう。そんな私達の様子を和美ちゃんが心配そうに見ていたことには、全く気付かなかった。


仕事が終わり、千尋は「お先に」の言葉を残して、早々に退社。課長も


「早めに上がれよ。」


と私に声を掛けると、帰って行く。


私は、書類のまとめがあるので少し残業。ほかにも何人か残っているけど、その中に澤城くんもいた。


前はあまり残業する姿を見なかったけど、課長が小笠原さんに変わってからは、残業常連さんみたいになってしまった澤城くん。大変そう。
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