Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
クリスマスか・・・。小さい頃、まだ親がいた頃には、家族でケーキ食べたり、クリスマスプレゼントもらったり。


サンタクロースを信じてたのは、何才くらいまでだったかなぁ。自分が現実に気付いたあとも、弟や妹にバレないように親や婆ちゃんと口裏合わせた時は、なんか自分が大人になったような気がした。


そんな弟妹も、とっくに出掛けて、今日は1人。我が家の土日じゃ、珍しくもない光景だけどな。


それにしても、昨日の内田は何だったんだ?課長と寝たって、堂々とカミングアウトして来やがって、それで俺にどういう反応させたかったんだ、アイツは・・・?


課長もあれだけ石原にのぼせ上がってたくせに、あっさり内田に乗り換えたってことか?それとも「据え膳食わぬは・・・」なんて、時代錯誤の行動か?


石原が可哀想だよな。恋人と親友に裏切られるなんて、ドラマや小説の世界だけにして欲しいよ。でも石原は優しくて、お人好しのところがあるから、案外あっさりと課長許しちゃって今頃・・・。


あぁ!俺、1人でなにウジウジ考えてるんだよ。俺には関係ないことじゃんか。そう・・・関係ねぇことなんだよ・・・。


『あんたが梓のこと、好きなのミエミエだったもんね。』
『私がわかるくらいなんだから、梓本人が気付かないわけないでしょ。』


ふと、昨夜の内田の言葉が蘇る。本当にそうなのか?石原からの告白断ったくせに、本当はアイツのこと、ずっと好きなこと、アイツ本人にもバレてるのか?


石原は俺とじゃ幸せになれない。そう思って、俺はまさかのアイツからの告白を断った。


やがて、小笠原さんが現れ、当たり前のように石原を見初め、口説いた。将来を嘱望された若き課長と、いつ会社をクビになってもおかしくないコミュ障の俺と、どっちが石原にふさわしいか、百人が百人、課長と答えるだろう。


だけど俺は、よりにもよって好きな女の親友と浮気して、その子を悲しませるような馬鹿な真似だけはしない自信がある。


だからなんなんだよ、どうしたいんだよ、俺は!


訳がわからず、苛立っている自分が、自分でわからなかった。
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