Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
そんな時に携帯が鳴り出した。休日に自分の携帯が鳴るなんて、滅多にないから、誰からかと思えば、小川。


「もしもし。」


『もしもし、暇でしょ。』


「なんだよ、いきなり。俺の大切な読書タイムを邪魔する気なら、切るぞ。」


俺もよく言うな、いろいろ考えちゃってて、読書なんか全く手に付いてなかったくせに。すると、そんなことはお見通しを言わんばかりに小川が言う。


『ちょっと出てこない、話があるんだけど。』


「お前、学習能力ないのか?また、彼氏に怒られたいのかよ。」


呆れ声で言うと


『大丈夫だよ、今日はちゃんと断ったから。』


「えっ?」


『こないだは、サワと会うつもりなんて、全然なかったけど、今日はサワに用事があるんだから、ちゃんと了解得たよ。』


「・・・。」


『でも飲み屋はまずいよね、日もまだ高いし。ファミレスにするか。』


俺が、イエスの返事もしてないのに、明るい声で小川は待ち合わせ場所を指定して来た。


結局、特に拒む理由もなく、俺が待ち合わせ場所に行くと、既に席に着いていた小川が笑顔で手を振って来る。その姿を見て、よく見るとアイツも結構可愛いじゃん、なんて思ってしまったのは内緒。


「待たせたな。」


「大丈夫、私もちょっと前に来たところ。」


なんて言い合いながら、席に着いた俺は、気になってることを聞いた。


「なぁ、考えてみたら、今日こんな風に、俺なんかと会ってる場合じゃないんじゃないのか?」


こっちは真剣に心配してやってるのに、なぜか吹き出す小川。


「なんだよ。」


「だって、梓と同じようなこと言うから。」


「石原と?」


「さっきまで、梓と会ってたから。まぁ、ご心配いただいて、恐縮の限りですが、世の中の全部のカレカノがクリスマスにデート出来るわけじゃないでしょ?仕事の人もいるんだから。カレとはちゃんと明日会う約束してるからご心配なく。」


と言うと、小川は笑った。
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