Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
時間は確実に過ぎて行く。


クリスマスも過ぎ、世間は年の瀬の慌ただしさを日に日に加えて行く。だが俺は病院通いを続けていた。


『有休なんて、いくらでもやる。だから必ず元気な梓を、俺達の前に連れて来い。』


あの日、俺は確かに課長にそう言われて送り出された。しかし本当に数日、病院に詰めさせられた時は、感謝するより、この年末の忙しい時に、俺は本当に要らない人材なのかと、凹んだ。もっとも、さすがに最後の数日は出勤になったけど。


それはともかく、石原は目を覚まさない。こんこんと眠り続けている。


仕事納めも終わり、病院のスタッフの数も目に見えて数が減り、正月を自宅で過ごす一時退院の患者が病院を後にする姿が増えて行く。


だが、石原と両親は、新しい年を病院で迎えることになった。


俺も小川も内田も、病院に通い詰めた。他の友人知人も入れ代わり立ち代わり、姿を見せる。例のお婆さんも、形としては加害者になるドライバーも憔悴した姿で、奥さんと一緒に謝罪と見舞いに現れた。


事故そのものは示談の方向らしいのだが、石原の容態がはっきりしないこともあって話はなかなか進まず、事故当時、助手席に座っていた小学生のお子さんが、状況を目の当たりにして、かなりショックを受けて、学校にも行けてないんだそうだ。


苦しむのは被害者ばかりではないという現実は、重かった。
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