Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
「初めて出会った中2のあの日、俺はお前に伝えたいことが出来た。それはたったひとつのことで、文字にすれば、10文字にも満たず、言葉にすれば1秒もあれば口に出来ること。なのに、俺にはそれが出来なかった。言えなかったんだ。勇気がなくて、伝えるきっかけも方法もわからなくて。」
「・・・。」
「結局とうとう、言えず終い。途中でお前を誤解してしまったこともあったけど、それよりなにより、ヘタれでコミュ障の俺にはあまりにもそれは高いハードルで、どうしようもなかった。だから・・・諦めた、諦めるしかなかったんだ。」
ふた口目のケーキを口に運ぶことなど、出来るはずもない。今は、ただ澤城くんを見つめることしか出来なくなっていた。
「それから10年、コミュ障とヘタれにますます磨きをかけた俺の前に、お前は、石原梓は、目も眩むばかりの素敵な女性になって、突然また姿を現した。」
「澤城くん・・・。」
こんな時に、からかわないで・・・。
「その上、お前の方から、ずっと前から俺のことが好きだったなんて言われて、正直パニックになった。だけど・・・俺の中で中学の時『言えなかったこと』は、その時には『言ってはいけないこと』に変わってしまっていた。お前と離れていた10年の間に俺は、何人もの愛する人、大切な人を失っていた。だからもう、俺はそういう人をこれ以上、増やさないで生きよう、そう決めてたから。」
そうだったんだ・・・予想もしなかった澤城くんの思いに、私は胸をつかれる。
「それにもっと単純に、俺じゃお前には不釣り合いだと思ったし、小笠原さんが現れて、その思いはますます強くなった。これで良かったんだ、そう思った。いや、必死に自分にそう言い聞かせてたんだろうな。」
ここで、澤城くんはフッとため息をついた。
「・・・。」
「結局とうとう、言えず終い。途中でお前を誤解してしまったこともあったけど、それよりなにより、ヘタれでコミュ障の俺にはあまりにもそれは高いハードルで、どうしようもなかった。だから・・・諦めた、諦めるしかなかったんだ。」
ふた口目のケーキを口に運ぶことなど、出来るはずもない。今は、ただ澤城くんを見つめることしか出来なくなっていた。
「それから10年、コミュ障とヘタれにますます磨きをかけた俺の前に、お前は、石原梓は、目も眩むばかりの素敵な女性になって、突然また姿を現した。」
「澤城くん・・・。」
こんな時に、からかわないで・・・。
「その上、お前の方から、ずっと前から俺のことが好きだったなんて言われて、正直パニックになった。だけど・・・俺の中で中学の時『言えなかったこと』は、その時には『言ってはいけないこと』に変わってしまっていた。お前と離れていた10年の間に俺は、何人もの愛する人、大切な人を失っていた。だからもう、俺はそういう人をこれ以上、増やさないで生きよう、そう決めてたから。」
そうだったんだ・・・予想もしなかった澤城くんの思いに、私は胸をつかれる。
「それにもっと単純に、俺じゃお前には不釣り合いだと思ったし、小笠原さんが現れて、その思いはますます強くなった。これで良かったんだ、そう思った。いや、必死に自分にそう言い聞かせてたんだろうな。」
ここで、澤城くんはフッとため息をついた。