Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
俺と石原が、初めて出会ったのは、中学2年で同じクラスになった時だ。


1学期の席決めで、たまたま隣同士の席になった俺達。


「石原梓です。1学期の間、よろしくお願いします。」


少し恥ずかしそうに、そう挨拶してくれた石原。席が隣になったからって、わざわざそんな挨拶をしてくれた奴なんて、その前にも後にも記憶にない。


ビックリしたが、当時からバリバリのコミュ障で、まして女子となんかまともに話したこともない俺は


「さ、澤城です。こ、こちらこそ、よ、よろしく。」


とカミカミで返すのが、精一杯だった。こうして、約4ヶ月間、隣同士の席で過ごした俺達だが、実は何かあったわけじゃない。


コミュ障とは言え、俺だって思春期の男子。人並みに異性に興味はあった。でも隣のその子は、どう見てもクラス、いや学年でもかなり上位に入る可愛さ。


そんな彼女に俺の方から話し掛けるなんてことは、天地がひっくり返っても、あり得ない。


石原の方からは、最初の頃は、ポツリポツリと何か言ってくれていたのだが、俺がまともな返事を返さない、いや返せないでいるうちに、さすがに呆れられたらしく、ゴールデンウィークが過ぎる頃には、ほぼ没交渉になった。


こうして、あっと言う間に夏休み。


「澤城くん、また2学期にね。」


「あ、あぁ。」


この会話を最後に、俺達の席は離れた。
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