Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
「アズのこと、好きだったんだな、アイツ。」


斎藤くんの後ろ姿を見送りながら、ヒロくんがポツリと言った。


「えっ?」


「好きな子の気を引きたくて、つい意地悪したり、ちょっかいを出す。小学生男子にはあるあるの話だ。」


そう言って、私の顔を見るヒロくん。


「そうかな・・・?」


なんとも返事のしようのない私に


「そのあるあるのお陰で、アズは間違っちゃったってことか。」


「えっ?」


その言葉に、私は驚いてヒロくんの顔を見るけど、それ以上は何も言わずに、彼は歩き出す。


それから、私達はしばらくお祭りを見て回った。射的や金魚すくいなんかを童心に返って楽しんだ後、少し疲れたので、人混みから少し離れ、神社の境内でひと休み。


「ねぇ、ヒロくん。」


一緒に買ったかき氷も食べ終わり、私はヒロくんを見ると、さっきから、ずっと気になってることを聞いた。


「私が何を間違えたって言うの?」


私のその言葉に、彼は私の方を少し見ると、視線を外した。


「もし、アイツがあの日、ここでアズをからかったりしなかったら、その後、アイツとお前がどうなったかはわからないけど、俺とお前は、こうなってないよな、きっと。」


「ヒロくん・・・。」


「俺がたまたま、あの時、変な男気出したお陰で、お前勘違いしちゃったんだよな。」


ヒロくんが何を言いたいのかわからず、私はただ彼の顔を見つめる。


「お前、何も感じない?」


「?」


「お前が、せっかくそんな綺麗で可愛く、浴衣で決めてるのに、俺の恰好と来たら・・・なんの変哲もない普段着。台無しだよな、これじゃ。」


そう言って、下を向くヒロくん。


「お前の姿見て、しまったと思ったけど、実際祭りに来てみてさ、浴衣の彼女の横には、ちゃんと浴衣や甚平を着こなした彼氏がいる。中学生のカップルでも社会人のカップルでもみんな同じ。申し訳なかったよ・・・。」


ヒロくんはそんなこと、気にしてずっと元気なかったんだ。私は唖然として、彼を見ていた。
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