Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
「今日だけじゃねぇよ。付き合い始めてから、ずっとそうだよな。なんか噛み合わなくて、いつもなんかずれてて、お前を楽しませてあげられるデートなんか、全然出来なくて。今度はちゃんとしよう、今度は決めよう、毎回そう思ってもまるでダメで・・・。俺はやっぱり小笠原さんにはなれない。スマートにお前をエスコートすることなんか出来ないよ。」


「・・・。」


「あんな出会い方しなきゃ、アズはきっと俺なんかに見向きもしないまま、今頃は俺なんかよりもっと、お前に相応しい・・・。」


「いい加減にしてよ!」


何か、くどくど言ってるヒロくんに耐えられなくなって、とうとう大きな声を出してしまった。


「ヒロくん、それ本気で言ってるの?」


「アズ・・・。」


「私、今日嫌な顔した?せっかく私が浴衣なのに、何その恰好って言った?」


「い、いや・・・。」


「こないだのデートやその前のデートで、私、そんなにつまらなそうにしてた?もし、そうだったんだとしたら、謝るよ。」


「・・・。」


「確かにヒロくんを好きになったきっかけはあの日のこと。でも、それはあくまできっかけ。私はあれから街中で、学校で、ずっとあなたを見てたんだよ。」


健吾くん、栞菜ちゃんの面倒を見てる時の笑顔。


カラスが散らかしたゴミ集積場を1人で掃除している姿。


道を尋ねて来た人に一所懸命に、身振り手振りを交えて教えてる姿。


自分が誤解されたのは、悲しかったけど、佐久間くんが傷つけられた時、美里をキチンと怒った姿。周りからなんと言われても、自分は間違ってないと信念を持って、態度を変えなかったあなたは素敵だった。


「さっきだって、そうだよ。何にも言わなかったけど、浴衣で歩きづらい私を気遣ってくれた優しさ、ちゃんと伝わってるよ。そういうあなたを見て、私は15年もあなたへの好きを積み重ねて来たんだよ。私のヒロくん好き歴を舐めないで。」


自分でもびっくりするくらい、一気にまくしたててしまったあと、私は改めて彼を見た。


「あの日、出会ってなくても、私達、中学でクラスメイトにはなってたよね。」


「たぶん・・・。」


「だとしたら、私はやっぱりヒロくんを好きになってたはず。それは、自信あるよ。」


そう言って、私は彼に笑顔を向けた。
< 224 / 225 >

この作品をシェア

pagetop