Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
週が明けた。例によって、午前中が、慌ただしく過ぎて行き、あっと言う間に、昼休みを告げるチャイムが聞こえて来る。


食堂に誘ってくれる千尋に、連絡したい所があるから、先に行っててくれるように告げると、私はデスクを離れた。


急いで部屋を出て、少し待っていると、予想通り、彼が1人で出て来た。


「澤城くん。」


そう声を掛けると、彼は驚いたように私を見た。


「石原。」


その彼の表情に、まるで中学生の時のようにドキマギしながら、私は懸命に話し掛ける。


「突然なんだけど・・・。」


一瞬、躊躇した後、私は思い切って言った。


「今日、仕事終わった後、ちょっと時間もらえないかな?」


「えっ?」


その私の言葉に、戸惑ったような視線を向けて来る澤城くん。


「どうしたんだよ、急に?」


「う、うん。ちょっとお話ししたいことがあって・・・。」


真っ直ぐに彼に見つめられてるのが、恥ずかしくて、うつむき加減の私を、澤城くんは不思議そうに眺めていたけど


「まだこの間のこと、気にしてるのか?だったらあの時は、内田・・・さんの言う通り、確かに俺の言い方も悪かった。謝るよ。」


「それは私がミスったんだから・・・。」


「じゃ、まさか、今更中学の時のことを謝ってくれるとか?」


「そ、そうじゃなくて・・・。」


「じゃ、なんだよ。もったいぶらないで、今、ここで言ってくれよ。」


「こ、ここじゃ、ちょっと・・・。」


ここで沈黙が流れる。少し、間があったあと、澤城くんが言った。


「今日はダメだな。」


「えっ?」


「家の食事当番なんだ。」


その澤城くんの言葉に、私が驚いてると


「明日でもいいか?」


との言葉が聞こえて来て


「うん。」


と慌てて答える。


「わかった。じゃ、そういうことで。」


そう言って、澤城くんは離れて行く。相変わらずの対応だけど、兎にも角にも約束が出来て、私はホッとしていた。
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