Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜

⑨

次の日、出社すると、石原は既に部屋にいた。俺の顔を見ると、固い表情のまま、会釈してくれたけど、あとはもう、目を合わせてくれなかった。


ごめん、俺は心の中で、もう1度頭を下げた。


朝、出勤する前に、いつものように翔真に線香を上げた後、俺は少し、アイツと話をした。


（石原が、俺のこと好きだって。中学どころか、俺がアイツに気が付く前から好きだったって・・・。再会しただけでもビックリだったけど、まさかだよな、本当に。）


俺は、翔真の遺影に語り掛ける。


（なんで、俺なんかを好きになってくれたのか、我ながら全然わかんないけど、嬉しかったよ。アイツいい子だもんなぁ。小川あたりにそそのかされて、バカやってたけど、根は本当に優しくて、真面目な子だよ。それは今でも変わってなかった、それも嬉しかった。でも、断っちまった。）


俺は、1つため息をついた。


（どう考えても、俺じゃ役不足だもんなぁ。断るのに、お前ダシに使っちまった。ゴメンな。でも、これでよかったと思う。なぁ翔真。）


そう俺が語り掛けた翔真は、やっぱり18歳の時の笑顔のままだった。


始業のチャイムが鳴り、朝礼を経て、業務スタート。石原とは、同じ部屋にいるけど、課が違うから、仕事上で関わることは、あまりない。


そう言えば、明日からゴールデンウィーク突入。特に用事があるわけじゃないけど、入社1ヶ月の節目。


今日も頑張るか。