Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
「今日は出掛けるから。」


翌日の朝、朝食の時、俺が言うと、弟も妹もえっ?っという顔で、俺を見た。


「どうしたの、急に?GW中は家で読書三昧って言ってたじゃない。」


不思議そうに尋ねる栞菜に


「昨日、中学時代のクラスメイトから突然電話が来て、会いたいって言われたから。」


と答えると


「へぇ、そんな親しい人いたんだ。」


いや、別に親しくはなかったんだが・・・。そんなことを思っていた俺は、次の妹の言葉に耳を疑った。


「ひょっとして、梓ちゃん?」


なんで石原の名前が出て来るんだ?それも「梓ちゃん」なんて親しげに・・・。戸惑う俺をよそに


「あぁ、アズちゃんか。懐かしいなぁ。」


ア、アズちゃん・・・?健吾がもっと親しげに呼ぶから、俺は、本当に目が点になる。


「お前達、石原のこと、知ってるのか?」


その俺の言葉が、むしろ意外だと言う顔で、栞菜が答える。


「うん。前は、よく遊んでもらったよ。」


「兄貴が昔、祭りの時に、アズちゃん助けたじゃん。その後、お礼に来てくれて。たまたま兄貴がいない時だったけど。それから道で会ったら挨拶したり、そのうちウチに訪ねて来たり、逆にアズちゃんちにこっちが遊びに行ったこともあったなぁ。」


なんだよ、それ。全然知らないぞ、俺。


「言ったよ。アズちゃんが初めて来た日に。そしたら兄貴、フーンって、興味なさそうに聞き流してたけど。」


全く記憶にない・・・。


「中学に入って、兄さんと一緒の学校になったって、喜んでたし、2年生になってクラスも同じになったって、嬉しそうに話してくれたよ。だから、当然私達は、2人は学校で仲良くしてると思ってた。」


「全然知らなかった・・・。」


「そうなの?」


栞菜はそう言って驚く。
< 45 / 225 >

この作品をシェア

pagetop