Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
「なぁ、俺達アイツに、ご馳走さまも言えてない・・・。」


あまりにも鮮やかというか、急な美里の去り方に、私達はまだ呆然としたまま。


そう言えば、美里に私も一緒にお墓参りに行くことになったと告げた時


「フーン、サワの奴、自分から梓を誘ったんだ。」


とやや意味深な口調で言った。たぶんその時から決めていたのだろう、頃合いを見て、私と澤城くんを2人にしようって。


美里、あなたの心遣い、ホントは感謝しなきゃいけないんだろうけど、正直ちょっと、いや、かなり気まずいよ、これ。


報告したよね、私、澤城くんにコクって振られたんだよ・・・。


沈黙が2人を包んだが、


「とりあえず、出るか。」


と澤城くんがようやくという感じで言う。祝日の昼下り、席待ちのお客の姿も目に入り、会計も済んでる形の私達が、いつまでも席を占領しているわけにもいかない。


ファミレスを出て、車に向かった私達。助手席に乗り込むのも、気恥ずかしい。行きは最初にピックアップしてもらった私が、いきなり後部座席に座るのも失礼だと思って、助手席に乗った。


帰りは美里に助手席に座ってもらうつもりだったし、当然今日は3人で行動するとばかり思っていたから、これは本当に想定外だ。


車がスタートする。これからどうするの?澤城くんは黙々とハンドルを握るだけ。このまま、家に送ってもらうにしても、1時間は2人きりのドライブ。


このまま、ずっと黙ってる訳にもいかない。何か話題を・・・必死に考えていた私の脳裏に、ようやくあることが浮かんだ。
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