Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
GWが明け、出勤すると、千尋は既にデスクにいた。


「おはよう。」


「おはよう。」


そんな挨拶を交わしてると、うしろから


「おはよう。」


の別の声が。澤城くんだ。


「おはよう。」


私がそう返すと、少しはにかんだような笑顔を見せて、彼は自席に向かって行く。


「そう言えば、プチ同窓会は盛り上がったの?」


「お陰様で。千尋の方は、合コンの成果は?」


「女子の欠員が結局埋まらなくてさ。ちょっとね・・・。」


「ゴメン。」


「別に。梓のせいじゃないし。」


と言いながら、千尋の声はちょっと尖っている。なんとなく気まずい空気が流れる中、朝礼のチャイムが鳴る。


今朝は部合同朝礼。GWも明けて、いよいよ今日からは、改めて個々の業務に邁進願いたいとの訓示のあと、部長はこんなことを言い出した。


「尚、今日から両課の新人男子の所属を入れ替えます。澤城くんがマーケティング課、水野(みずの)くんが企画課の所属になりますので、よろしくお願いします。」


意外な発表に、ザワつくオフィス。突然のことで、澤城くんも戸惑いを隠せない表情だ。


「では、本日も1日、よろしくお願いします。」


そのザワつきを断ち切るかのように、司会のウチの課長がそう言って、私達はそれぞれのデスクに向かう。


「ねぇ、どういうこと?」


「さぁ?どっちか、あるいは両方とも使えないからじゃない?」


「えっ?水野はしっかりやってたじゃないか。」


「じゃ、向こうのコミュ障くんか?」


「面倒臭いことにならなきゃいいけど。」


周囲で交わされる容赦ない会話に、私は心配になって来る。
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