Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
実は私も気になってはいたのだ。だけど、着任早々から、厳しいことを言う若い課長に、なんとなく引くというか、敬遠気味な雰囲気になってしまっていたのと、課長自身があまり、そういうことを好まないんじゃないかというこちら側の勝手な思い込みがあって、誰からも声が上がらなかったのだ。


やはり知らん顔と言うわけにはいかないし、第一失礼だよなってことになって、成り行きで私達3人が幹事に指名されてしまった。


そこで、その日の定時のチャイムがなった後、恐る恐ると言った感じで、私と千尋が課長にお誘いを掛けると


「本当?そりゃ光栄だな。是非よろしくお願いします。」


とまさに満面の笑み。ああなんか申し訳ないことしちゃったなと思わずには、いられなかった。


日程については、お任せするとおっしゃるので、着任から少し時間も経ってしまったし、じゃ今週の金曜日にということで、まとまった。


「でもさぁ、なんで私達が幹事なの?普通新人の仕事じゃない?」


帰り道、千尋はご機嫌斜め。確かに、この手の飲み会の幹事は1番下の若手がやるのがウチの課の慣例。ということは、今回は澤城くんともう1人の新人女子の仕事のはず。


ところが澤城くんの幹事を不安視する先輩達からの声があり、昼間の経緯もあるからと、よくわからない理由で、私達がご指名に預かることになってしまったのだ。


「結局、澤城のワガママじゃん。なんで、アイツだけ特別扱いなの?僕はコミュ障ですって言ってれば、なんでも通っちゃうわけ?そんなの、おかしいよ。」


「うん、確かにね。千尋の言うことはもっともだと思うよ。でも・・・。」


澤城くんの幹事って、確かにちょっと心配だし・・・。


「梓には悪いけどさぁ、アイツ本当に頭来るんだよね。」


別に私に悪いことはないんだけど・・・ね。
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