Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
⑲
「行きたくねぇな。」
朝起きて、そう思うようになって、しばらく経った。登校拒否ならぬ出社拒否か・・・我ながら情けないと思いながら、それでもベッドから起き出す。
両親と爺ちゃん、婆ちゃん、それに翔真にいつも通り、線香を上げたあと、食卓につくと、栞菜が朝食を並べてくれる。
「しっかり食べて、今日も頑張ってね。」
「お前はオフクロか?」
「そんな軽口が叩けるんじゃ、大丈夫だね。さ、食べて、食べて。私も学校行かなきゃならないんだから。」
偉そうな言い方をしてしまえば、この妹と弟は、俺の背中を見て、育って来た部分は確かにあるはず。ちょっとくらい、壁にぶち当たったくらいで、めげる姿を見せるわけにはいかない。
食欲はなかったが、全て平らげ、身支度を整えた俺が
「じゃ行ってくる。今日も遅くなるだろうから、夕飯は自分達でやってくれ。」
と言って出掛けようとすると
「わかった。兄さん、これ。」
と栞菜がなにやら包みを出して来た。
「なんだよ、これ?」
「マグカップ。昨日梓ちゃんと買い物行った時、ちょっと目について。会社の休憩時間に使ってよ。私に応援されてるって、思いを馳せながら。」
「そうか、ありがとう。じゃ遠慮なく。行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
なかなか可愛いことを言ってくれるじゃないか、俺は素直に嬉しかった。
会社に着いて、開けてみると、コーヒーブレイクに使うには、ちょうどいい大きさのカップが出て来た。
(なかなかセンスいいじゃねぇか。)
デザインも俺好み、さすが我が妹だ。悦に入りながら、デスクの隅に置いていると
「おはよう。」
と俺の後ろを通り過ぎる石原の声。
「おはよう。」
俺はそう返すけど、石原は特に俺を振り返るでなく、そのまま自分の席に行ってしまう。
今日も1日が始まる。
朝起きて、そう思うようになって、しばらく経った。登校拒否ならぬ出社拒否か・・・我ながら情けないと思いながら、それでもベッドから起き出す。
両親と爺ちゃん、婆ちゃん、それに翔真にいつも通り、線香を上げたあと、食卓につくと、栞菜が朝食を並べてくれる。
「しっかり食べて、今日も頑張ってね。」
「お前はオフクロか?」
「そんな軽口が叩けるんじゃ、大丈夫だね。さ、食べて、食べて。私も学校行かなきゃならないんだから。」
偉そうな言い方をしてしまえば、この妹と弟は、俺の背中を見て、育って来た部分は確かにあるはず。ちょっとくらい、壁にぶち当たったくらいで、めげる姿を見せるわけにはいかない。
食欲はなかったが、全て平らげ、身支度を整えた俺が
「じゃ行ってくる。今日も遅くなるだろうから、夕飯は自分達でやってくれ。」
と言って出掛けようとすると
「わかった。兄さん、これ。」
と栞菜がなにやら包みを出して来た。
「なんだよ、これ?」
「マグカップ。昨日梓ちゃんと買い物行った時、ちょっと目について。会社の休憩時間に使ってよ。私に応援されてるって、思いを馳せながら。」
「そうか、ありがとう。じゃ遠慮なく。行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
なかなか可愛いことを言ってくれるじゃないか、俺は素直に嬉しかった。
会社に着いて、開けてみると、コーヒーブレイクに使うには、ちょうどいい大きさのカップが出て来た。
(なかなかセンスいいじゃねぇか。)
デザインも俺好み、さすが我が妹だ。悦に入りながら、デスクの隅に置いていると
「おはよう。」
と俺の後ろを通り過ぎる石原の声。
「おはよう。」
俺はそう返すけど、石原は特に俺を振り返るでなく、そのまま自分の席に行ってしまう。
今日も1日が始まる。