Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
朝礼が終わると、俺は課長に呼び止められた。


「澤城。」


「はい。」


「この前のモニターアンケートの結果、いつまでにまとまる?」


「はい、今日中には。」


「遅いぞ、何日かかってるんだ?得意のデータ分析のスピードまで落ちてるんじゃ話になんねぇだろ。」


「・・・。」


「お隣がお待ちかねなんだ。どんなに遅くても、俺が帰って来るまでには、間に合わせろ。」


「わかりました。」


課長はこれから取引先との打ち合わせに外出で、戻りは昼過ぎになるはず。これは昼飯抜きか・・・データ分析自体は難しい話じゃない、問題は課長が求める「自分の意思」だ。


データ分析の基本は、予断や思い込みを廃し、客観的な視点を見る者に提供することだと思うのだが、小笠原さんの考え方は違う。


課長が石原達に説教していた時も、当然聞いていたが、俺は納得出来なくて、一度議論してみた。が


「お前のその考え方は易きに流されているだけだ。」


と決めつけられてしまった。


「じゃ、出掛けます。戻りは午後一くらいになりますから、何かあったら、連絡下さい。」


俺が仏頂面を抱えて、デスクに向かうのを見送ると、課長は周囲にそう言って


「石原、お待たせ。行こう。」


と声を掛けた。


「はい。」


その声に立ち上がった石原。課長のお供を仰せつかった彼女は、嬉しそうに顔をほころばせると、いそいそと課長に付き従って、部屋を出て行った・・・ように俺の目には映った・・・。
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