Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
「そうこうしてるうちに、ターゲットは2人に絞られた。俺は彼女達を上長として、そして1人の男として、観察していた。気持ち悪いって言われれば、一言もない。謝るよ。」


「・・・。」


「結論が出たのは半月ほど経ったころだった。その子は、俺が初めて見た時にいいなって思った子だった。俺のファーストインスピレーションに間違いはなかったんだって、なぜかホッとしたよ。」


「あの、課長・・・。」


たまりかねて、私は声を出したけど、課長の独白は止まらない。


「でも、その想いを伝えることがなかなか出来なかった。いい歳して、情けねえって自分でも思ってたけど、タイミングもきっかけもなかなか掴めなくて。それに部下に告白するって、こんなに難しいもんだとは思わなかった。下手すりゃセクハラになりかねないし、本当に難しかった。」


「・・・。」


「今日だって、本当は来なくたってよかったのに、なんとかチャンスがないかなんて思って来てしまった。でも来てよかったよ、澤城のお陰だ。アイツが普通の感覚の持ち主だったら、たぶんこうして2人きりになることも出来なかった。」


ねぇ、まさかこれって・・・私がこの期に及んで、動揺しまくっていると


「石原、好きだ。お前のことが好きなんだ。」


と私の目を真っ直ぐに見つめた課長が、ついにミサイル並みの破壊力を持った言葉を、私に向かって放った。


「ひょっとしたら、恋愛したいから、とりあえず、手頃に部下の中から、お前を選んだみたいに聞こえたかもしれない。もしそうだったら謝るし、完全に否定させてもらう。石原、俺は真剣だ。本当にお前が好きなんだ。」


あまりにも意外な展開と告白。課長の顔が見られなくて、私は顔を真っ赤にして、うつむいてしまっていた。
< 99 / 225 >

この作品をシェア

pagetop