運命が紡いだ物語

陽向side

今日は入学式。

知っている人が誰もいないという不思議な環境を楽しみながら荷物の整理をしていると、

「初めまして、坂下結愛です。」

うぉ、びっくりした！

前の席の子が話しかけてきた。

「咲野陽向です。」

「どこの中学から来たの？」

「隣の県から‥。」

「えっ！
そうなんだ。
私は隣町の中学から来たの。
これからよろしくね。」

突然話しかけられて驚きながらも、坂下さんの、親しみやすい性格のおかげですぐに打ち解けた。

「こちらこそよろしく。」

坂下さんとはそれから他愛もない会話をするようになった。

何度か話をしていくうちに、俺は坂下さんがよく話してくれる牧原花さんという人に興味を持ち始めた。

彼女は、黒髪ストレートがよく似合うおとなしい感じの子で、坂下さん以外の子とはほとんどしゃべらない印象の、無口な子だった。

「花はね。本当にやさしくてさぁ。
この前なんか‥‥」

そう言って嬉しそうに話す坂下さんを見て、
俺はどんどん牧原さんのことが知りたいって思うようになった。

牧原さんってどんな人なんだろう？

無口なイメージだからクールな性格なのかな‥。

でも、
坂下さんの話でとってもやさしい人なんだということだけはわかった。