運命が紡いだ物語
5月に入ったある日の放課後。

部活に行こうとして教室に忘れものをしたことに気がついた俺が急いで教室に戻ると‥

「あっ、花！ちょっと待ってね。」

「いいよ。ゆっくりで」

マイペースな坂下さんが帰る準備をしているのを牧原さんが手伝っているところだった。

坂下さんとはしゃべっている時の牧原さんは普段の無口でクールなイメージと違ってとても穏やかな顔をしていた。

その時、

ガタガタ‥

坂下さんが机に入っていた教科書やノートを床に落としてしまった。

あっ！

「あーぁ‥。」

「結愛。大丈夫？」

そう言って、牧原さんは床に広がる教科書たちを拾った。

「はい。これ‥。」

俺は牧原さんに拾った教科書を渡した。

「あっ、ありがとう。」

笑顔で言う牧原さんに、俺はドキッとした。

こんな顔して笑うんだ‥。

これが牧原さんと交わした初めての言葉だった。
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