徒花
「そーなんだよなぁ。マジ累、俊輔じゃあるまいし、ちょっとは手加減しろよ。このまま行ったら喧嘩する相手がいなくなっちまう」
「は?何言ってんだ傑。俊輔じゃあるまいし、俺ちゃんと手加減してるけど。普通にやったら殺しちまう」
「はぁ……」
俺が返した言葉に、傑が黒髪短髪を掻きむしりながら項垂れる。
その様子に、グラスを拭き終わった金髪が苦笑しながら言った。
「諦めろよ傑。俊輔じゃあるまいし、累はちゃんと手加減してるだろ。手加減してアレなんだよ」
「なぁなんでさっきから俺貶されてんの!?」
注文したメロンソーダを叩き置いて赤髪を刈り上げた一番年下のくせに一番背の高い男が叫ぶ。
「お前、相手を蹴り飛ばすのはいいけどこっちに蹴るな。邪魔なんだよ」
「ごめんなさい……」
黒い長髪を結った男にそう窘められて素直に謝った末っ子に、バーが笑いで満たされる。