小指
「佐伯さんって
見た目を裏切るね~」

バレーボールの練習中にチームメンバーの
林くんが口にした

だから
私は球技は苦手だって…

「フォームはいいんだけどね~」
陽ちゃんがフォローする

「頑張ります!」
頭を下げる私

白いボールが私の前にくる

よし
今だ!

ボールはネットとは反対に飛んでいく

それを追いかけてくれるのは
いつも智くんだった

他のメンバーは
大きな弧を描くボールを眺めるだけだけど

智くんはボールを追いかけて走って
チームメンバーに返してくれた


「私、思うんだけど
ブロック以外は手を出さないほうが
いいような…」

「一理ある!」
林くんは大きくうなずく

陽ちゃんは不満そうだけど
とくに良い提案がなくて
黙っていた

「もう少し
練習してみようよ

付き合うからさ」

智くんがほほ笑んだ

懐かしいな~、その笑顔

なんて思ってみたりするけど
中学生の頃の幼いイメージは
智くんにはなかった

「いや…でも
当日、足を引っ張るわけには

…ねえ~
君塚くんファンに恨まれたくないっす」

私は首を横に振る

練習するのはいいんだけど

練習するということは
智くんの時間まで
引き裂くわけで

そうなると
智くんファンの女性に恨まれるという結果になるんだよね

気づいている?
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