愛しの彼はマダムキラー★11/3 全編公開しました★
第十章
――あのホテルは、きっとシキコと行くつもりだったに違いないわ。
そう思いながら、それでも甘い夜の記憶に胸が熱くなる。
結局、金曜の夜から日曜の朝までずっと星佑と過ごしていた。
日曜、遅いブランチをルームサービスでとり、トボトボと帰る。
「送れなくてごめんね」
午後は用事があるという星佑は、そう言って美海にキスをした。
星佑が向かった先は――。
とあるカフェ。
カフェと言っても地味な喫茶店という雰囲気の店だ。
カランカランという扉についた呼び鈴を鳴らしながら店内に入ると、奥まった席から男がチラリと顔を覗かせた。
調査会社の男だ。
彼の用事とは、調査の報告を聞くことだった。
コーヒーが席に届くと、挨拶もそうそうに男は写真を取り出して、星佑の前に並べた。
写真には璃鈴と男が写っていて、ふたりで食事をしている。
「この女性は徳永璃鈴。美海さんの従姉です。そしてー」
「ん? これはNAGATOKUの社長?」
「ええ、徳永璃鈴の夫です」
調査員は、次に別の写真を見せた。
写真には璃鈴とシキコが写っている。
「このふたりは犬猿の仲らしいです。これはあくまで想像ですが、彼女が近づいてきた理由は、そのあたりにあるのかもしれません」
場面変わって璃鈴の自宅リビング。
璃鈴が、夫を相手にブーブー文句を言っている。
「シキコの奴、もうちょっとで尻尾を掴んでやるんだから」
「まだ張り合ってるのか?」
「だって、許せないわ、あの女、あなたに色目使ったのよ」
きっかけは、あるチャリティオークションで璃鈴がシキコに競り勝ったことだった。
ムキになった自分も大人げなかったとは思うが、そんな反省などすぐに消し飛んだ。
以来、シキコはパーティで出くわす度に、わざとぶつかってグラスのワインを服にかけたり、
『あらやだ、ごめんなさぁい』
これみよがしに嫌味を言ってきたりする。
『あら、ごめんなさい気づかなかった。地味過ぎてよく見えなかったわぁ』
とまあそんな感じで璃鈴とシキコは以来会うたびに小競り合いを繰り返している。
グラスに手を伸ばすと先に取られるとか、その程度のうちはまだよかったが、あるパーティで許せない事件がおきた。
シキコが璃鈴の夫に『じゃじゃ馬な奥さまで、あなたも大変ね。我慢していないで離婚しちゃえばいいのに』と言ったのだ。
「じゃじゃ馬はどっちよ! 美魔女きどりの色欲魔!」
「まぁまぁいいじゃないか、僕はなにも気にしていないよ」
璃鈴の夫は璃鈴の頬に優しくキスをする。
シキコに言われた璃鈴の夫は『彼女を愛してるのですよ』と笑って答えていたのだった。
「璃鈴、そんなことよりも美海ちゃん大丈夫なのか? その男に酷い目にあったりしていたらどうするんだ」
璃鈴の夫は、美海に偵察を頼んでいることを知っていた。聞いている内容は、あくまでもざっくりとだが。
「大丈夫よ、あの子はね本当に真面目な子なの。変な男にひっかかるような子じゃないわ」
というわけで、実は璃鈴が離婚しているというのは嘘だったのである。
璃鈴の目的は、前々からパーティーとかで張り合ってるシキコが星佑という若い男と浮気をしているという噂を聞きつけ、その証拠を探ろうとしていたのだ。
興信所にも頼んだことがあったが、どうしても尻尾をつかめない。
それで美海を送りこんだのである。
そう思いながら、それでも甘い夜の記憶に胸が熱くなる。
結局、金曜の夜から日曜の朝までずっと星佑と過ごしていた。
日曜、遅いブランチをルームサービスでとり、トボトボと帰る。
「送れなくてごめんね」
午後は用事があるという星佑は、そう言って美海にキスをした。
星佑が向かった先は――。
とあるカフェ。
カフェと言っても地味な喫茶店という雰囲気の店だ。
カランカランという扉についた呼び鈴を鳴らしながら店内に入ると、奥まった席から男がチラリと顔を覗かせた。
調査会社の男だ。
彼の用事とは、調査の報告を聞くことだった。
コーヒーが席に届くと、挨拶もそうそうに男は写真を取り出して、星佑の前に並べた。
写真には璃鈴と男が写っていて、ふたりで食事をしている。
「この女性は徳永璃鈴。美海さんの従姉です。そしてー」
「ん? これはNAGATOKUの社長?」
「ええ、徳永璃鈴の夫です」
調査員は、次に別の写真を見せた。
写真には璃鈴とシキコが写っている。
「このふたりは犬猿の仲らしいです。これはあくまで想像ですが、彼女が近づいてきた理由は、そのあたりにあるのかもしれません」
場面変わって璃鈴の自宅リビング。
璃鈴が、夫を相手にブーブー文句を言っている。
「シキコの奴、もうちょっとで尻尾を掴んでやるんだから」
「まだ張り合ってるのか?」
「だって、許せないわ、あの女、あなたに色目使ったのよ」
きっかけは、あるチャリティオークションで璃鈴がシキコに競り勝ったことだった。
ムキになった自分も大人げなかったとは思うが、そんな反省などすぐに消し飛んだ。
以来、シキコはパーティで出くわす度に、わざとぶつかってグラスのワインを服にかけたり、
『あらやだ、ごめんなさぁい』
これみよがしに嫌味を言ってきたりする。
『あら、ごめんなさい気づかなかった。地味過ぎてよく見えなかったわぁ』
とまあそんな感じで璃鈴とシキコは以来会うたびに小競り合いを繰り返している。
グラスに手を伸ばすと先に取られるとか、その程度のうちはまだよかったが、あるパーティで許せない事件がおきた。
シキコが璃鈴の夫に『じゃじゃ馬な奥さまで、あなたも大変ね。我慢していないで離婚しちゃえばいいのに』と言ったのだ。
「じゃじゃ馬はどっちよ! 美魔女きどりの色欲魔!」
「まぁまぁいいじゃないか、僕はなにも気にしていないよ」
璃鈴の夫は璃鈴の頬に優しくキスをする。
シキコに言われた璃鈴の夫は『彼女を愛してるのですよ』と笑って答えていたのだった。
「璃鈴、そんなことよりも美海ちゃん大丈夫なのか? その男に酷い目にあったりしていたらどうするんだ」
璃鈴の夫は、美海に偵察を頼んでいることを知っていた。聞いている内容は、あくまでもざっくりとだが。
「大丈夫よ、あの子はね本当に真面目な子なの。変な男にひっかかるような子じゃないわ」
というわけで、実は璃鈴が離婚しているというのは嘘だったのである。
璃鈴の目的は、前々からパーティーとかで張り合ってるシキコが星佑という若い男と浮気をしているという噂を聞きつけ、その証拠を探ろうとしていたのだ。
興信所にも頼んだことがあったが、どうしても尻尾をつかめない。
それで美海を送りこんだのである。