愛しの彼はマダムキラー★11/3 全編公開しました★
第十五章
――いったいいつから、偽物の人妻だって気づいていたの?
星佑の部屋。
星佑がいれてくれたコーヒーを飲みながら、美海はバレていたことに戸惑っている。
――どうしよう? 本当のことを言ったらリン姉さんが……。
「君の従姉妹は離婚なんてしていないし、俺と付き合ってもいない。朝比奈シキコと俺との関係を疑って君に偵察させるのが目的だそうだ」
「え?」
美海は、大きく目を見開く。
「聞いてみるといい」
美海は、璃鈴に電話をして真相を正す。
「リン姉さん離婚したって嘘なの? 和泉社長と付き合っていたっていうのも?」
『あ、バレちゃった? 実はそうなのよ。朝比奈シキコの尻尾を掴みたかったの。ごめんね、美海責められたら本当なことを言って、あなたは悪くはないんだから』
あっけらかんとした璃鈴の様子に電話を切って唖然とする美海。
「いつから、知っていたの?」
「昨日、君の偽夫に話を聞いた。もっとも最初から疑っていたけどね」
ルルルと星佑のスマートホンが鳴る。
「ちょっとごめん」
大事な仕事の電話なのか、スマートホンを片手に立ち上がった星佑は電話に出た。
置き去りにされた美海の言葉はひとりごとのように小さく響いた。
「それなら、最初から私をからかっていたの?……」
美海の瞳には、みるみる涙が溢れてくる。
いつのまにか本気で好きになっていたのに、全てを承知の彼の目には、そんな自分がどれだけ滑稽に映ったか。
恥ずかしさと憤りで、咄嗟に美海は部屋を飛び出した。
電話中の星佑が振り返って驚いた時には、美海は廊下を走っていた。
受話器を抑えながら「美海! 待て」と叫ぶが美海は出て行ってしまう。
そんな時に限って、外はゲリラ豪雨のようなどしゃぶりの雨だった。
傘を持たない美海はずぶ濡れになって走る。
雨と涙でぐしゃぐしゃになりながら路地に入り込んでしゃがみこんだ。
「ひどい……。リン姉さんも、晃良さんも、知っていたんだ」
バカみたいに人妻のふりをして、まんまと星佑の誘いに乗って。
溢れる涙は止まらない。
ひとしきり泣いたところで、ふわりと肩にかけたれた上着。
見上げるとそこには星佑がいた。
「風邪ひくぞ」
という彼も、ずぶ濡れだ。
「俺だって、そこまで悪趣味なことはしない」と言いながら、星佑は美海を抱き寄せる。
「信じてはもらえないかもしれないけど、たぶん一目惚れだったんだ。君が社長室に現れた時から、ずっと君のことばかり気にしていたのは、怪しんだからだけじゃない」
星佑は、自分にも問いかけるように思い浮かべる。
頬を染めて初々しく挨拶をするところも、形のいい足も、可愛らしい声も。
星佑の記憶の中で、美海の全てがキラキラと輝いている。
「愛してるよ。美海」
「私、人妻じゃないけど、それでもいいの?」
クスクスと星佑は笑う。
「いったい俺をなんだと思ってるんだ」
星佑のマンションに帰ったふたりは、そのまま一緒にシャワーを浴びる。
ふたりは甘い夜を過ごした。
星佑の部屋。
星佑がいれてくれたコーヒーを飲みながら、美海はバレていたことに戸惑っている。
――どうしよう? 本当のことを言ったらリン姉さんが……。
「君の従姉妹は離婚なんてしていないし、俺と付き合ってもいない。朝比奈シキコと俺との関係を疑って君に偵察させるのが目的だそうだ」
「え?」
美海は、大きく目を見開く。
「聞いてみるといい」
美海は、璃鈴に電話をして真相を正す。
「リン姉さん離婚したって嘘なの? 和泉社長と付き合っていたっていうのも?」
『あ、バレちゃった? 実はそうなのよ。朝比奈シキコの尻尾を掴みたかったの。ごめんね、美海責められたら本当なことを言って、あなたは悪くはないんだから』
あっけらかんとした璃鈴の様子に電話を切って唖然とする美海。
「いつから、知っていたの?」
「昨日、君の偽夫に話を聞いた。もっとも最初から疑っていたけどね」
ルルルと星佑のスマートホンが鳴る。
「ちょっとごめん」
大事な仕事の電話なのか、スマートホンを片手に立ち上がった星佑は電話に出た。
置き去りにされた美海の言葉はひとりごとのように小さく響いた。
「それなら、最初から私をからかっていたの?……」
美海の瞳には、みるみる涙が溢れてくる。
いつのまにか本気で好きになっていたのに、全てを承知の彼の目には、そんな自分がどれだけ滑稽に映ったか。
恥ずかしさと憤りで、咄嗟に美海は部屋を飛び出した。
電話中の星佑が振り返って驚いた時には、美海は廊下を走っていた。
受話器を抑えながら「美海! 待て」と叫ぶが美海は出て行ってしまう。
そんな時に限って、外はゲリラ豪雨のようなどしゃぶりの雨だった。
傘を持たない美海はずぶ濡れになって走る。
雨と涙でぐしゃぐしゃになりながら路地に入り込んでしゃがみこんだ。
「ひどい……。リン姉さんも、晃良さんも、知っていたんだ」
バカみたいに人妻のふりをして、まんまと星佑の誘いに乗って。
溢れる涙は止まらない。
ひとしきり泣いたところで、ふわりと肩にかけたれた上着。
見上げるとそこには星佑がいた。
「風邪ひくぞ」
という彼も、ずぶ濡れだ。
「俺だって、そこまで悪趣味なことはしない」と言いながら、星佑は美海を抱き寄せる。
「信じてはもらえないかもしれないけど、たぶん一目惚れだったんだ。君が社長室に現れた時から、ずっと君のことばかり気にしていたのは、怪しんだからだけじゃない」
星佑は、自分にも問いかけるように思い浮かべる。
頬を染めて初々しく挨拶をするところも、形のいい足も、可愛らしい声も。
星佑の記憶の中で、美海の全てがキラキラと輝いている。
「愛してるよ。美海」
「私、人妻じゃないけど、それでもいいの?」
クスクスと星佑は笑う。
「いったい俺をなんだと思ってるんだ」
星佑のマンションに帰ったふたりは、そのまま一緒にシャワーを浴びる。
ふたりは甘い夜を過ごした。