一緒に歌おう〜国も、色も、血も越えて〜
「ユールヒェン!静かにしなさい!」

先生の声で、音羽は顔を上げる。音楽室から飛び出したのはユールヒェン。嫌な予感がした。

音羽も音楽室の外に出る。廊下には先生とユールヒェンの怒鳴り声が響いているので、すぐに二人がいる場所はわかった。

「静かにしなさいと言っているでしょう!他の生徒に迷惑です!」

「あんたこそ怒鳴り散らしてんじゃねぇか!!生徒に言う前に自分が直せよ!!」

「何ですって!?そもそもはあなたがーーー」

「ああ、もう!!うるっせぇんだよ!!」

ユールヒェンがここまで怒っているなんて珍しい。音羽が固まっていると、ユールヒェンが音羽に気付き、音羽を見つめる。

その目は、怒りと悲しみに満ちていた。ユールヒェンは涙の溜まった目で音羽を睨みつける。

「嘘つき!友達のくせに!!」

ユールヒェンは音羽に近づき、胸ぐらを掴む。「やめなさい!」と先生が叫ぶが、ユールヒェンはそれを無視して音羽に言った。
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