一緒に歌おう〜国も、色も、血も越えて〜
「テスト、失敗だった!!あれだけ練習したのに全部無駄だった!!先生から言われたのは、「あなたには才能がない」だってさ!!先生は最初から気付いてた!でも、あんたも気づいてたんでしょ?」

ユールヒェンは肩で息を吸い、音羽を睨む。音羽はただ十センチほど身長差があるユールヒェンを見上げるしかできない。

「私は、気付いているなら言ってほしかった!!別の道を生きてもいいって思いたかった!!あんたが黙ってにこにこ笑っていたおかげで、こんなにも傷つくはめになって、こんなにも惨めになった!!周りはみんな上手でプロだって目指せる。でも私は、有名音楽家の家に生まれたのに才能がない!あんたの中途半端な優しさで私はここでの居場所を失った!!」

ユールヒェンはそう言い、走っていく。怒鳴っていたユールヒェンの目からは、次々と涙があふれていた。

「……私のせいで……」

音羽の体が震えた。それは、怒鳴られた恐怖からではない。ただ悲しかった。
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