一緒に歌おう〜国も、色も、血も越えて〜
ユールヒェンはそのまま学校を飛び出していったようで、放課後の音楽室にその姿はなかった。

音羽はそっとピアノに触れる。多くの生徒がこのピアノでたくさんの曲を弾いてきた。

音羽は、ピアノが好きだ。それと同じくらいユールヒェンもフルートが好きだった。いつも隣にいた音羽は、それをよくわかっていた。

「才能がない」

その現実を突きつけられた時、どれほどショックだっただろう。でも、傷つけるのが怖かった。

頭の中に、旋律が浮かぶ。Miraiの新しい歌だ。

音羽は椅子に座り、ピアノの上に指を置く。音楽室に切ないメロディーが響いた。


懐かしい音が頭を巡る
君と初めて歌った思い出の歌
君も私と同じように
音楽が大好きだった
だから、傷つけたくなくて
だから、嘘をついて
優しいと思ってたその嘘は、
君を一番傷つけてたんだね


歌っている途中、ピアノの弾いている最中、音羽の目から涙があふれて止まらなかった。

音楽室から音が消える。音羽は涙を手で乱暴に拭った。
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