一緒に歌おう〜国も、色も、血も越えて〜
「ユールヒェンって、見た目はとてもボーイッシュだけど、お菓子作りが好きなんだよね。ギャップ萌えよ」

そう言い、音羽はユールヒェンに抱きつく。ふわりと甘い匂いがユールヒェンからした。その香りを音羽は思い切り吸い込む。

「まあね。今度、カルディナール・シュニッテン作ってあげるわ」

音羽の頭を、そっとユールヒェンは撫でる。音羽は「Danke(ありがとう)」と繰り返す。甘いものは大好物なためだ。

カルディナール・シュニッテンとは、オーストリアでとても人気のある定番のケーキだ。卵白をしっかり泡だてて焼くメレンゲ生地と、卵黄をふんわりとさせた生地を交互に練って焼いたもので、コーヒー風味のクリームが挟まれている。見た目もとても豪華だ。

オーストリアには、貴族や国王が多くいたために、古くから音楽だけでなくお菓子も発達してきた。見た目も豪華なものが多いのだが、甘く重たいお菓子が多いのも特徴。

音羽の頭の中に、薄く伸ばしたパイ生地のチーズパイが浮かぶ。前にユールヒェンが作ってくれたものだ。
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