一緒に歌おう〜国も、色も、血も越えて〜
「今度、トプフェンシュトュルーデルの作り方教えて?作ってみたいの」

「もちろん!任せとけ!」

そう言いながら、二人は道を歩く。オーストリアの街並みは、上品な佇まいと色をしている。王や貴族が多かったというのも音羽はわかる気がした。

「今日はフルートのテストなんだよなぁ」

ユールヒェンが隣で笑う。音羽の胸がちくんと痛んだ。

「あんまり自信ないんだ〜。今回の課題曲、めちゃくちゃ難しいんだよなぁ」

ユールヒェンは大きくため息をつく。音羽の胸は強く締め付けられたままだ。

「Mir gent es gut.(大丈夫よ)Wenn es dir gelingt(あなたならきっとできる)」

音羽は、ユールヒェンを傷つけないために嘘をついた。

「……ん。Danke(ありがとう)」

そう言い、ユールヒェンは笑う。その憂いを含んだ笑顔に、音羽は泣きそうになってしまった。

ユールヒェンの家族は、みんな楽器が弾ける。そして音楽家として活躍している。そのため、ユールヒェンも幼い頃からフルートを習っているのだ。
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