一緒に歌おう〜国も、色も、血も越えて〜
無理にプロになったとしても、すぐに壁にぶつかってしまう。音楽学校の先生だって、それに気付いているはずだ。

「……ユールヒェン」

音羽の呟きは、廊下を歩く生徒たちの声にかき消された。

音羽の留学している学校には、大きな音楽室がいくつもある。個別で練習できる部屋もいくつもあり、音羽たちピアノのグループは今日は個別レッスンの日だ。

「音羽、今日はいつもと違う練習をしましょう」

メガネをかけ、白い上品なワンピースを着た若い女の先生が言った。練習中の「トッカータOp.7」の楽譜を用意していた音羽は「えっ?」と聞き返す。

先生はにこりと上品に微笑む。その仕草は、まるで貴婦人のようだった。

「今日は、あなたの好きな歌を好きなだけ弾いてください。いつも頑張っているご褒美です」

「本当ですか!?嬉しいです!」

音羽は笑顔になり、喜ぶ。弾きたい曲はたくさんある。

先生が見ている中、音羽は指を鍵盤の上で動かす。大好きなボーカロイドの曲を中心に弾くことにした。
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