Fall -誘拐-
「私の知る限り、
あの人は口うるさい程“何かあったらすぐメモれ”と私や他の部下達に言っていました。
当然いつも東条さんの胸ポケットには手帳と万年筆があったのですが・・。」
『誰かが持ち去ったという事でしょうか?
確か110番通報は匿名者でしたよね?』
「当時はその可能性についても考えました。
しかし、それで何かが発生する事もなく・・正直そのまま有耶無耶に・・。」
『それでは質問を変えます。
東条警部があなたと袂を分かち、
1人で捜査をするようになった後の話で、
何か覚えている事はありませんか?』
「・・・・何か・・・・何か・・。」
『東条警部は本当に何も手掛かりを得られていなかったのでしょうか?』
「もし何かあれば私に報告してくれたはずですから・・恐らくそれは・・。」
『・・そうですか・・・。
これほど故人とお話してみたいと、オカルトじみた事を考えた日はありません。』