Fall -誘拐-
「東条さん・・?」
「うん?」
「具合悪いんですか?」
「・・?いや、大丈夫だけど・・・。」
「すみません、汗もかいてるし、
顔色が悪く見えたので・・。」
「元々汗っかきなだけだよ。」
店内に入って、
西平君が座る後ろの席に位置取る。
店員から水をもらった後、
背を向ける・・勘の良い西平君に気付かれないよう、
気休め程度の粒薬を1つ流し込んだ。
“カランカラン”
「いらっしゃいませー!」
約束の時間を10分ほど過ぎた頃、
扉が開いて男が入ってきた。
事前に聞いていた服装、帽子。
「こんにちは!西平です!」
私よりも先に、待ち合わせの人物だと気付いた西平君が声を掛け、
座っていた席まで連れて行った。
「・・・・・・・・・・・・。」
ジロジロ見ると怪しまれるので、
私の席を横切る際、0.5秒程で情報を取ってすぐに目を逸らす。
“虚弱体質”という言葉がよく似合う線が細く、前髪が目に掛かっていて襟足も長い。
・・清潔感をあまり感じられない・・西平君と同い年ぐらいに見える若い男だった。