Fall -誘拐-
「お会いできて光栄ですダースモールさん!今日は宜しくお願いします。」
「人前でハンドルネームを呼ぶな恥ずかしい。」
「あ、失礼しました。
なんて呼べばいいですか?」
「・・・前川。」
「本名ですか?」
「あぁ。」
「じゃあ雑誌に載せる時はそれ以外の仮名で載せますね。」
「・・・あぁ。」
鼓膜を研ぎ澄まし、
背中で西平君とダースモールの会話を聞く。
ボソボソと喋っているが何とか聞き取れた。
「早速ですが、
そのバイトはどういうキッカケで?」
「・・ある日突然・・・
郵便受けに封筒が入ってた。」
「ほうほう。」
「中に紙が入ってて、
“ドッキリ企画に参加しませんか?”
って一番上に書いてあった。
いま若い女の子達の間で、
親子の絆を確かめる“誘拐ドッキリ”が流行ってるって説明が書いてあって、
犯人役になってターゲットの家に電話を掛けて欲しいっていう内容だった。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「募集対象は【都内在住】っていうだけで・・よく分からなかったけど・・。」
「分からなかったけど・・?」
「・・・引き受けてくれる場合、
前金として50万。
終わったら200万の給料をお支払いしますって書いてあった。」