Fall -誘拐-
「堺班長!」
その時、一足先に現場へ到着していた部下が合流してきた。
「ちょっと待った。その前に・・彼が今日からウチに加わる神野君。」
「よろしくお願いします。」
「あ、よろしくね神野君。
班長、店内の防犯カメラは全部駄目でした。
一台残らずぶっ壊されてます。」
「・・・今回も手掛かり無しか・・。」
一刻も早くこの残虐な犯人を捕まえなければいけないのに、
俺達をあざ笑うかのように突破口が無い。
思わずうなだれてしまう。
「神野、着任早々大変なヤマ・・・・・あれ?」
さっきまですぐ隣にいたのに、
神野は店内の方まで戻っていたようだった。
こちらに背中を見せ、ぎっしりと詰まったギターに囲まれる中心に立っている。
「堺班長、また良さげな奴連れてきましたね。」
「やっぱお前もそう思う?なんてったって平松刑事部長の推しだからな。」
「金魚のフンみたいにくっつかず、
ああやってちゃんと自分の五感で何かを感じ取ってる。
初日とは思えない貫禄なんですけど。」
「・・・フッ・・確かにな。」
突破口が見つからないなら、
こちらからこじ開けてやればいい。
私がそう口に出す前に、
神野の背中からはそれが伝わってきた。
第2章 完