Fall -誘拐-
「そこは広報部の人間が入っていい場所じゃねぇぞ?」
「堺さんに許可を頂いていますので。」
「何しに来た?」
「広報部の仕事内容なので言えません。」
「ダメだ。」
「あ?」
「堺が許可しただと?
どうせお前お得意の嘘だろうが、
俺が許可しない。」
「・・・・・・・・・。」
「堺の上司は俺だ。お前を資料保管室の中に入れるか入れないかの決定権は俺にある。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
相変わらず狸は閉じた扇子をトントンと肩に当てながら俺の周りを回る。
一刻も争うこの状況で、
余計に俺の血管が切れそうになるが、ここで事を荒立ててもしょうがない・・。
「では多村課長。
無許可で入らせて頂きます。」
「はぁ?」
「始末書だろうがなんだろうが、お望みなら後で穴開くぐらい書いてやりますよ。」
「・・ハッハッハ!
減らず口は変わってないようだな神野。
いいぞ。入りたければ勝手に入れ。
その代わり、出てきた瞬間お前を機密文書持ち出しの罪で取り押さえる。」